選ばれし者たちの戦い

ボートレーサーは成績によって4つの級別(ランク)に分けられる。デビューしたての新人レーサーが最初に加わる「B2」クラス、一般戦がメインの「B1」クラス、トップに王手をかけた「A2」クラス。そして類まれなる実力を持つ一流レーサーが集う最上位の「A1」クラス。約1,600人のボートレーサーのうち、「A1」クラス在籍は上位20%に過ぎない。彼らトップレーサーが手にする年間獲得賞金の平均は2,900万円。級別は半年毎に更新され、成績が振るわなければ降格の可能性もある。

レースに勝利することで選手に支払われる賞金も、そのグレードに応じて上がっていく。トップグレードである「SG」のレース優勝賞金は1,600万から3,500万円、最高峰のレース「グランプリ」は1億円にものぼる。当然ながら、グレードの高いレースに出場できるのは一部のレーサーのみ。勝ち続けなければ、高額賞金を手にするチャンスすら回ってこない。

羽野直也選手は現在23歳。2014年にデビューから3年でA1クラスに昇格した実力派レーサーだ。30〜40代の中堅〜ベテラン勢がしのぎを削るクラスで、2017年には最優秀新人に選出。ボートレース界のホープとして注目を集めている。(2019年1月現在)

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「ずっと目指していたA1で、憧れていた選手たちと勝負できるのは本当に幸運なことです。練習をきっちり積み重ねて、その時々の自分ができることを着実にこなしていった結果だと思っています。やはり、実戦にまさるトレーニングはありません。走り続けるためにレース場にできるだけ長い時間身を置き、誰よりも多く出走することをずっと意識してきました」

先輩レーサーへ食らいつくために

10代から70代までと、レーサーの年齢層が極めて広いのは、ボートレースの特徴の1つだろう。親子以上に年齢の離れた選手たちが同じレースに出場し、火花を散らす。一度戦場に出れば、たとえルーキーであっても一切の手加減はない。実戦経験の少ない若手レーサーが、数々のレースで勝利を重ねてきた先輩レーサーと同じ舞台に立つプレッシャーは相当なものだろう。

しかし、羽野選手は並みいる強豪を退け、デビューからわずか3年6ヵ月でGIグレードの競走を制した。2017年10月の「GI開設65周年記念 海の王者決定戦」では、実績のあるベテランレーサーを下し、優勝を飾っている。平成生まれのGI覇者はボートレース史上初。歴史的な瞬間だった。

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「先輩からすると、『後輩が挑んできた』ことに対するプレッシャーはあったかもしれません。でも、他のレーサーやお客さんの視点で見れば、僕は『勝てなくて当然』みたいなポジションです。むしろ肩の力を抜いて、全力でレースに挑めたことが良い結果につながったんだと思います。まだ経験が浅いからこそレースでがむしゃらに走ることができるし、ミスをした時は先輩からアドバイスをもらうこともできる。そういう意味で、自分は恵まれていると思います」

今の目標はタイトル獲得

破竹の勢いで勝利を積み上げる羽野選手。2019年1月時点で、デビューから今までの累計獲得賞金額は1億円を超えたという。獲得した賞金額は、レーサーの強さを示す証明書ともなる。2018年は年間獲得賞金ランキングで42位に入り、2年連続2度目のグランプリシリーズ出場権を得た。最優秀新人選手となった2017年に続き、数字でも結果を出し続けている。

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「目下の目標はタイトル獲得です。ですが、そのために自分を変えるのではなく、まずは自分らしいレースを意識し、あとからどんどんプラスアルファしていきたいですね。今後の課題はエンジンやプロペラの調整力。レース展開やターンなどは先輩を見て学ぶことができても、肝心要のボートやエンジンの調整は自分でなんとかしなくてはいけません。素晴らしい選手たちの中で揉まれつつ、モチベーションを高く持ちたいですね」

武器は若さと柔軟さ。ボートレース界の俊英は、今年もさらなる高みを目指す。

ボートレース芸人・永島知洋の視線

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羽野選手は総合力が高く、気持ちの入ったレース運びが魅力。まだ20代とは思えないほど卓越した技術には、思わず舌を巻いてしまう。年齢的にはまだまだ若く、もっと伸びしろがあるだろう。今後の成長が楽しみで仕方がない。

羽野直也(はのなおや 1995年3月29日生)

登録番号4831 身長166センチ 114期 福岡支部所属 
デビュー後初優勝をかけたレースでSG覇者を下して優勝するなど、新世代レーサーの牽引役として期待されている。

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